「同治」と「対治」
「同治」と「対治」という言葉があります。
元は仏教用語らしく、僕は五木寛之のエッセイで知ったのですが、例えば高熱を出した時に、氷で冷やして熱を下げる方法が「対治」。逆に汗をかかせることで熱を下げる方法が「同治」なのだそうです。
これは人を励ます時にも同じことが言えて、落ち込んでる人に「元気出そう!」と励まして立ち直らせるのが「対治」。そばで一緒に涙を流すことで負担を軽くする方法が「同治」と言えます。つまり、病気や困難に出会った時に、「対治」がそれらに打ち勝つことを目的にしているのに対し、「同治」はそれらを受け入れることで気を楽にしようという考え方なんですね。
いきなりなぜこんな話をしたかと言いますと、ミルキィホームズの主題歌を聞いてガチ泣きした、というエントリを最近見まして。僕もこの曲大好きで200回以上聞いてますが、あらためて聞いてみると、サビの部分。
忘れないで正解は まだまだいっぱいあるでしょう
これって、すごく「同治」的な考え方じゃないかと思うんですよ。
- アーティスト: 譲崎ネロ(徳井青空),エルキュール・バートン(佐々木未来),コーデリア・グラウカ(橘田いずみ))ミルキィホームズ(シャーロック・シェリンフォード(三森すずこ),畑亜貴,こだまさおり,山口朗彦,鈴木裕明
- 出版社/メーカー: ランティス
- 発売日: 2010/10/27
- メディア: CD
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正解はいっぱいある、という「同治」
僕は普段からひっきりなしに音楽を聞いてますが、音楽にも「対治」的な曲もあれば「同治」的な曲もあります。どちらが良いと言う気はありません。気合い入れたい時は激しい曲聞きますし、辛い時には優しい曲も聞きます。でも、人間には本当に立ち上がれない時がある。励ましの言葉も全て空虚に思える時もある。そんな時に、聞きたくなるのは「同治」的な曲なんじゃないかと思います。
上記のミルキィホームズの主題歌は、決して癒される曲ではありません。どちらかと言うと能天気で、いかにもアニメの主題歌っぽい明るさに満ちた曲だと思います。でも、落ち込んだ時に聞くと、何だか心地いいんですね。というのも、この言葉自体が、
「肯定」をベースにした言葉だからだと思うんです。
人間は生きていくうちで、いろんな選択を迫られます。「あの時こうしていればよかった」と、戻らない過去を悔やむ時もあるでしょう。「こんなはずじゃなかった」と、今を不安に思うこともあるでしょう。
でも、自分で出した答えなら、それは間違いじゃない。きっとそれもまた、一つの正解なんです。
このフレーズが、そんなことを言ってるように思えたんですね。さらなる高みや理想を目指すのもいい。でも、その道の途中で躓いたり転んだり…。思い描いたものと違う、現実の自分を否定したくなる時もあるけど、時にはダメダメな自分を受け入れてもいいのではないか。期待はずれの生き方も、それはそれで悪くないんじゃないか。それがきっと「正解はいっぱいある」という言葉の、本当の意味じゃないかと思います。
そう言えば、Mr.Childrenにも「Any」という曲がありますね。こちらはもっとストレートにそんなことを歌ってました。
- アーティスト: Mr.Children,桜井和寿,小林武史
- 出版社/メーカー: トイズファクトリー
- 発売日: 2002/07/10
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身近にある「同治」
僕も普段は能天気にアニソンなどを聞いたりしてますが、仕事が辛くて仕方ない時の通勤途中に聞くと、何気ない曲の歌詞が琴線に触れることがあるんですよ。最近はスフィアの曲聞いても、うるっとなる時もありますからね。滅入ってる時だから、ふとした「同治」的な歌詞に引かれやすくなってるのかも知れません。
実を言うと、最初にエントリを見た時はあまり共感できなかったんですよ。でも、あらためて聞いてみると、単にご陽気な曲のようで、意外と奥が深いんじゃないか。普段聞き流してる曲の中にも、すごくいいこと言ってる歌詞がもっとあるんじゃないか、なんて思えたんですね。
そう思うと、アニソンの歌詞もバカにはできないなぁ…なんて考えたりもするのです。
PS. 迷走し始めてからが本番です −マボロシプロダクト
なにげないアニメソングのフレーズがグッと自分の胸に突き刺さる −すくぅうみうぎ